Q.「あの悲惨な戦争を経験したあなたから、人々に伝えたいことは?」
こう質問すると、だいたい同じ答えが返ってくる。
A.「この国にはもっと良い鉄砲が必要だ」
ウォーク・オブ・アメリカは、名誉除隊した英米軍人を対象としたキャンペーンだ。
内容は単純。ロサンゼルスからニューヨークまでのアメリカ横断1000マイルの道のりを、105日かけて歩き続ける。
途中の宿ではグループセラピーが行われ、参加者たちは従軍時代の思い出話や、安っぽくなったマーベルのドラマの愚痴で盛り上がる。
私が記者として参加した2018年のウォークは、1チーム6人構成の計6チームで実施された。
万全のサポート体制もあり、ウォークはつつがなく進行した。
そしてデンバーで大麻(メリージェーン)の誘惑にみごと勝利した晩、祝杯を挙げるチームメイトたちをしり目に、同行した私にもひとり30分の条件でようやく個人インタビューの許可が下りた。
プライバシーの保護のため詳細は明かせないが、とある戦争を経験した陸軍兵卒が、"デカい武器"が要る理由を熱弁してくれた。
陸軍では拳銃をダブルタップで撃つように訓練される。
すなわち一発目で面積の広い胸、二発目で急所の顔面に銃弾を叩きこむわけだが、上手くいかなかった場合、訓練では撃たない3発目の銃弾が必要となる。
射手への殺意を剥きだしに向かってくる少年兵に、慣れない新米が照準を合わせ、そして撃つ。
そのときの心理的負担は計り知れない。そしてストレスはミスを生み、ミスは兵士の死体を作ることとなる。
だから2発で確実に殺せる銃が要る。具体的には.45の弾を使用する拳銃が要ると彼は言った。
別の兵士に尋ねると、彼女は現行の9ミリ弾で良いという意見だった。
.45口径は反動で二発目が外れやすい。トータルで見るなら、小口径の.38や9ミリの拳銃の方が相手を足止めしやすいのだと言う。
どちらも合理的な意見だ。
たとえ訓練を積んだ射手であっても、銃が弾の発射器である以上、見解にはそうした根本の差がある。
ともあれ私が言いたいのは、合衆国という国は銃の口径によってリンカーンの時代よりも深刻な分断に陥っているという事実だ。
米陸軍の正式採用拳銃の変遷を見るだけでも、喧々諤々とした議論の跡が見られる。
初めに1911年に採用されたコルト拳銃の口径は.45。85年に更新されたベレッタM9は9ミリのパラベラム弾を使用し、その後はまたコルトの.45とベレッタ系列の9ミリでコンペが行われた結果、2017年には9ミリ弾を使用するベレッタ系列のM17へと更新された。
拳銃だけでなくライフルにおいても、定期的に口径の論争が巻き起こる。
最も話題にのぼるのは、NATO標準規格の.223弾とは別に.308弾用のモデルを採用するかという議題だ。
.308はバトルライフル用の重い弾頭で、ゼロインを250ヤード以上の距離に設定しても安定した命中率を誇る。
こちらもウクライナやイランでのデータで交戦距離の広がりが認められたため、従来よりも大型な弾頭が必要として、現在、米軍は.308とほぼ同等の口径となる.277FURY弾への更新を急いでいる。
このように銃の更新のたびに銃弾のサイズが変わるのは、世界的に見てかなり珍しい傾向だ。
コンペのたびに"賭けに出た"メーカーは大量の発注票を切る。調達計画は数年単位かつ迅速なビジネスだ。軍はしばらく旧式でやっていくつもりでも、メーカーはそうもいかない。製造ラインの切り替え、教練マニュアルの策定、安定した弾丸の供給もコンペの条件に入っている。
メーカーは誠意を見せるべく、まだ決まってもない未来の正式採用銃のために銃弾メーカーとの交渉を行い、そしてたいていの場合、どこかで破談する。
その中でダブついた不採用の銃と弾丸のセットは、物流の大動脈に乗って世界中に売り飛ばされる。
少し銃に詳しい人間なら、ダークウォーター社のオペレーターたちがレミントンSPC弾の詰まったXM8を構えている写真を見たことがあるだろう。あるいはイラクで活動中のエリニュス社の人間が大量のmodを装備したSCAR-Hに米軍規格のM80弾を装填している光景も、今やさほど珍しくない。
帳尻を合わせるべく、メーカーはありとあらゆる紛争地域にセールスを仕掛ける。
ただし得意先からの評価スコアは落としたくないから、大体の場合、客は善良なる西側の友人たちとなる。
コンペの後には、世界のどこかで潤う軍がある。これは資本主義として当然の流れだ。
ところで先ほど2017年のコンペで拳銃が変わったというが、その年は2014年のクリミア空港での教訓から、ウクライナが陸軍の再軍備計画を行っている時期にあたる。さらにその後の2019年のアメリカではAR15系列のM4に替わる新型ライフルの採用テストが始まり、銃弾の調達計画が見直されだした。
果たしてそこで溢れた弾たちは、今どこの戦場を飛び交っているのだろうか?
初めに言うが、これはれっきとした陰謀論であり、根拠はまったくない。
しかし最初のインタビューで、別れ際に言われた忘れられないジョークがある。
「アメリカで起こった出来事はすべてフリーメイソンとエリア51とCIAの陰謀で説明できる。
秘密結社と宇宙人は知らない。でも政府は半分くらい知っていた。」





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