幽霊を視る方法、と大それたタイトルをつけてしまったが「幽霊を視やすい条件」という方が正確である。伝わりやすさを優先した結果でありご容赦願いたい。
まずは私の実体験をお話したい。
ある夏、大学生だった私は友人3人と連れ立って千葉港に夜釣りへ行った。
私は早々に飽きてしまい、それを察してか友人の佐藤(仮名)が「化石探しに行くか」と誘ってくれた。海岸にしゃがんでブラックライトで照らしてやるとカニの甲羅やらサメの歯なんかが見つかるのだ。宝探しのようで童心を思い出させる。
しばし2人で励んでいると「こんばんは〜」と声が降ってくる。しまった。通行人か警察官か。不審者だと思われたに相違ない。
努めてにこやかに挨拶を返し顔を上げると、壮年の男が立っていた。短く整えられた髪に清潔感のあるセーターが安心感を与える。
「なにされてるんですか?」
「化石を探してるんです。こうやってライトを当てると光るんですよ」と佐藤。
「おお、本当だ。うずくまって何か探してるから財布でも落としたのかと…」
「いやいや!そうじゃないんです、誤解させてしまい申し訳ない」と私。
「いえこちらこそ急にお声かけしてしまってすみません、私はこれで」
男は去っていった。私は視線を戻し、改めてブラックライトを手に取る。
……セーター?8月に?
顔を上げる。男が去ってから10秒も経ってない。だだっ広い海岸には私と佐藤のみ。
「足跡がない」佐藤が溢す。
内臓が浮き上がるような心地だった。
残る2人の友人を呼び戻し、顛末を話すと逃げるように港を去った。コンビニで卓上塩を買い、振りかけあって解散。後日霊障の類はなかった。
以上を踏まえ、ここからが本題である。
幽霊を視る条件とはなんぞや。
心霊スポットに行くことか?
降霊術か?
違う違う。
私はそのいずれも実行していない。
「境界を曖昧にする」
これである。
夜は現世と幽世を濁し、
闇は水平線と地平線をぼかし、
海は文明と原始をにじませる。
そうやって人間の領域を離れ、限りなく彼らの領域に近づくことが怪異に触れる条件なのだ。
動画や画像を編集したことのある方なら"レイヤー"という概念を知っていよう。本来非表示になっているあの世のレイヤーをONにし、我々の世界に被せる。そう言えばわかりやすいだろうか。
例えば真夜中の神社
例えば夕暮れの裏山
例えば夜明け前の湖畔
そういった場所でいい。
一家惨殺のあった廃屋だの
戦国時代の処刑場だの
そんなところに行く必要はないのである。
良き怪異を。



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